「おかだこう」、「岡田千晶」夫妻、待望の最新作。
物語はまず、木の実をたくさん集めるため、初めて訪れる森に、おかあさんとやって来た、「こねずみ」の好奇心いっぱいの目線が印象的で、カエルやカタツムリを見つめる嬉しそうな表情や、綺麗な花(たぶん千日紅)に思わず手を伸ばそうとする、けなげな可愛らしさには、こねずみの心優しい一面が表れているようで、早速、感情移入させられます。
そんな新しい出会いに夢中になっていたら・・・
あれ? いつの間にか、おかあさんがいなくなっていたことに気付く、こねずみ。
空には夕暮れが漂いだして、思わず心細くなった、こねずみは、おかあさんを探すために駆け出します。
やがて、辿り着いた先は、柵で仕切られたサファリパークであり、この中からおかあさんの匂いがすると感じた、こねずみは、躊躇いなく入っていきます。
私にとっては、物語の内容に、ややありきたりな感を覚えたのですが、本書の初出が『キンダーおはなしえほん(2021年8月号)』で、ちょうど色々なものに興味を持ち始める、4~6歳児を対象にした絵本であることを認識したとき、納得できるものを感じました。
というのも、まずは本書の主役である「こねずみ」が、おかあさんを探そうとするメインストーリーに、子どもは、「おかあさん、見つかるかな?」と、自分事のような気持ちで、話の先が気になるだろうし、それに加えて『夜のどうぶつえん』という、子どもの好奇心を刺激する魅惑的な単語が二つも入っている、この禁断のワードには、きっと心躍らされること間違いないと思い、子どもにとって、夜には未だ見知らぬ異世界感が、普段出会うことのない動物にはワクワク感が芽生えることで、そこには、私の想像など遥かに超えた、子どもだけが知る、好奇心という名の夢に溢れた世界が、きっとその目と心には映っていることだろうと思い、改めて本書は、その対象年齢を、よく考慮して作られたものなんだということを実感いたしました。
また、それは、こねずみのとても小さな体に対して、出会う動物たちの、迫力あるダイナミックな姿とのコントラストも効果的に思われて、おそらくこれは、こねずみを子どもの目線にすることで、こねずみの動物を見上げるその眼差しを、子どもが自分のそれとして見られるような臨場感もあるのではないかと思い、しかもそれが、かなりの至近距離なのだから、これは子どもにとって、動物園以上に嬉しいんじゃないかな。
更に、その臨場感は、岡田千晶さんの、もはや円熟の域に達したような、圧倒的愛らしさと美しさに満ちた絵も効果的で、動物たちの絵には、その手触り感もありそうな毛並みの細やかさに、それぞれの感情が覗えるような、表情の繊細な描き方が素晴らしく、特に、独特なポージングが素敵なカンガルーと、顔全体に溢れた慈愛の表情で、こねずみの不安な心を包み込んでいる、キリンが印象的でした。